独学でブラッシュアップを続けた実務能力を本検定で再確認し、社労士試験に向けて段階的な学習のスタートが出来た小野厚之様にお話を伺いました。
私は新卒では小売業界に身を置いていましたが、就職超氷河期世代でしたので、業界内での先行きも見えず、将来キャリアヴィジョンを考慮した時に自分の業務経験が小売業界内でしか通用しない事に疑問を感じていました。
自分の積み上げた経験やスキルがこの先もずっと活かせる仕事はないかと考えておりましたところ、「給与計算業務」は労働者がいる場であれば、業界に関係なくもれなく必要な業務であり、関係省庁による最新法令に基づいて給与計算を実施する業務ですので、業界による相違はほとんどないことに気づきました。「ジョブ型」に特化した働き方の強さに魅力を感じましたので、そこから心機一転、経理職・労務職で再就職致しました。
入った会社は給与計算ソフトを利用して給与計算・賞与計算・年末調整等の業務を行っていました。最初は給与計算の実務本を購入し、私なりに独学で基礎知識を学びましたが、給与計算ソフトが利用出来れば自動的に計算してくれますので、今思えば、ソフトによる基本的な給与計算にのみ対応する業務でした。
実務経験を積んでいく中で、給与計算の明確な尺度を図る試験等が何かないかと調べておりましたところ、年金博士として有名な社労士の北村庄吾先生が給与計算実務に特化した検定試験をたちあげていた事を2016年にネット検索で知りました。
私としても給与計算業務を数年経験し、給与計算の実務能力を証明・見える化できる検定試験で自分の給与計算スキルはどの程度なのか?という事も客観的に把握する事ができると考え、早速2016年秋の2級試験を受験致しました。
2級に関しましては実務経験も数年経ており、各種最新法令を情報収集して知識のブラッシュアップを続けておりましたので、知識+計算ともにスムーズに、公式テキスト1本のみで合格出来ました。
2020年には1級を受験し、無事合格致しました。
私も部内で指導する立場となり、令和2年度に所得税制が大幅に改正された点も理解・把握していましたが、なかなか実務頻度の少ない範囲もカバーされている内容でしたので、総合的な給与計算・賞与計算・年末調整実務が出来る事を合格したことにより証明されて、まずは安堵しております。これからも日々の業務に邁進し、初めて給与計算をされる方等の指導を行っていきたいと思います。
またこの試験は社労士試験の登竜門のようなものではないかと感じております。私は2021年に社労士試験を受験するのですが、1級試験前半の知識問題30問は社労士試験の労基・社保・労働・雇用等の知識に近似した法律知識を問われる内容があります。
給与計算に特化した問題は社労士試験では出題されませんが、法律知識という意味では給与計算も社労士も一緒ですので、社労士試験に向けた段階的な知識獲得に役立ちました。
【1級】
私は、検定試験に向けて、以下の教材を購入致しましたが、同時に、様々な書籍等から最新法制度のチェックをかかさず行うようにしておりました。
① 2020年度版給与計算実務能力検定試験1級公式テキスト
今年は1級受験を既に決めておりましたので、出版早々2020年5月下旬位より購入しておりました。
② 2020年度版給与計算実務能力検定試験1級対策講座の受講
昨今のコロナ禍ということもあり、WEB講座で受講し、非常に有用なツールになりました。
公式テキストを先に購入しておりましたが、のちに対策講座の申込みをし、対策講座テキストをメインとして学習致しました。結局公式テキストは購入しましたが、学習内容は同じであるものの対策講座テキストの方がより詳細に、図表等も豊富で整理して表示され、給与計算実務能力検定1級試験に合格するためのポイントが明記されておりましたので、WEBでの解説動画の視聴+より詳細な教材で、自分にとっては最適な学習方法で合格することが出来ました。
【2級】
私の場合は実務経験を踏み・年度発行の給与計算・社会保険事務の書籍やそれ以外に給与計算・社会保険事務関連の書籍は購入しておりますので、基礎となる知識はついていると思います。
2級に関しましては、2016年受験で公式テキスト+実務経験のみで合格することができました。
実務経験がなくとも給与計算の基本的な仕組みを理解すれば公式テキスト1本で合格する事は可能です。
私は2020年に1級受験する事を早々に決定し、11月の本試験受験に挑みました。
昨今、割増賃金未払や時間外労働の上限超過等、世間を賑わせるニュースが目につきます。本検定で学ぶことができる基本的な労務管理や正確な給与計算が出来ていないと、従業員や世間からの信頼性を失墜させ、企業にとっては大きな責任問題へと転じ、莫大な損失となることが明確化されました。
給与計算ソフトは便利なので数字を入力すれば結果はでます。が、その本質となる最新の法知識を正確に理解した上でシステムを利用する事が、本当の意味での給与計算・年末調整が出来ることを意味していることになるのです。
私は1級に合格した今、給与計算担当者にはこの検定の学習は是非押さえておいてもらいたい内容だと思っております。
コロナ禍で働き方が大きく変わりました。これからはニューノーマルな生活様式・ウィズコロナ・アフターコロナで、うまく付き合いつつ業務を行わなけばなりません。政府の推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)、リモートワーク、働き方改革・同一労働同一賃金など、個々の自由な働き方に対応した給与計算をするためにも、給与計算というものを画一的に考えず、従業員だけでなく企業経営を支える重要な業務を担っているのだと言い続けていきたいと思っております。
※掲載内容は2021年3月時のものです。