経験に頼るだけでなく、給与計算を根本から理解するために検定試験に挑戦された、株式会社北澤・小泉知財研究所の小泉 悠 様にお話をお伺いしました。
ある社会保険労務士に就業規則の作成を依頼する機会がありました。その打ち合わせの過程で、自分がこれまで「慣れ」に頼って業務をこなしていたこと、また、法的知識が十分でないまま業務に携わっていたことを痛感しました。
経理・総務の業務に携わり13年以上が経ち、経験に基づいた作業はこなせるものの、それが慢心や見落としにつながる可能性があることに気づき、強い危機感を覚えました。
そこで、知識を体系的に学び直す必要性を感じましたが、漠然と勉強するだけでは身につかないと思い、明確な目標を設定することにしました。その際に社会保険労務士にご紹介いただいた「給与計算実務能力検定試験1級」を思い出し、せっかく学ぶならこの試験の合格を目指そうと決意しました。
この検定では、通常は給与計算ソフトを使用して行う計算プロセスを、自分の手で正しく計算できるようになることが求められます。この過程を通じて、給与計算の体系を深く理解し、より実務に即した知識を身につけることができます。
特に1級では、イレギュラーなケースにも対応できる力が必要となります。一度法的知識を身につけておけば、試験後に細かい内容を忘れてしまったとしても、適切なキーワードを用いて調べることができ、調べた内容を正しく理解し、実務で適切に対応することが可能になります。
近年では、給与計算をソフトに依存しているケースが多いものの、イレギュラーなケースや最終確認の際には、必ず人の目と法的な知識が求められます。そのような場面で、本検定を通じて培った知識は、大いに役立つでしょう。
さらに、本検定では給与計算だけでなく、労働基準法に関する重要な知識も習得できます。実際に、社内で当然のように行われていた業務が、労働基準法上問題のあるケースだったことに気づかされることもあり、改めて「知らないことの怖さ」を実感しました。
この検定は、社会保険労務士のように合格までのハードルが高い試験ではないため、誰でも挑戦しやすく、総務の実務に役立つ学習を探している方にとって最適な選択肢の一つと言えるでしょう。
勉強期間はおおよそ3か月程度で、効率的かつ効果的な学習を心がけました。この期間中、公式テキストと1級模擬試験講座は必須の教材として活用しました。
【学習プロセス】
まず、給与計算実務能力検定の公式テキストを3回繰り返し精読しました。
1回目:全体像を把握するため、理解できる箇所と不明な箇所を仕分けし、わからない部分にはマーカーで印をつけました。
2回目:マークした不明点を重点的に読み込み、内容を深く理解することを目的としました。
3回目:仕上げとして、全ページを通読し、曖昧な部分が残らないよう、知識を定着させました。
テキストの読解後は、公式テキスト内の確認問題に取り組みました。正解した問題でも、少しでも曖昧さを感じた箇所は該当ページに戻って復習し、再度問題に挑戦。このプロセスを少なくとも3周以上繰り返すことで、知識の定着と応用力の強化を図りました。
【模擬試験での仕上げ】
最終段階として、1級模擬試験講座を受講しました。この模擬試験は単なる仕上げではなく、むしろ最も時間をかけるべき重要なプロセスです。同じ問題が本試験で出題されることはないため、さまざまなシチュエーションを想定しながら繰り返し解くことに注力しました。
例えば、雇用保険の適用区分として「一般の事業」か「建設の事業」か、を判断する問題や、対象者が介護保険の適用となるか否かを見極める問題など、多様なケースを想定して対応力を磨きました。
試験会場で一点、気になる点がありました。問題用紙の管理方法についてです。問題用紙は持ち帰り厳禁とされていますが、試験終了後、受験者は問題用紙を机の上に置いたまま解散となりました。この際、全員が一斉に立ち上がって退室するため、混雑の中で他人の問題用紙を不正に持ち帰ることが可能な状況となっていました。
もしそのような不正行為が行われた場合、問題用紙を持ち去られた受験者は採点対象外となる可能性があり、意図せずして被害者となってしまう恐れがあります。
このようなリスクを防ぐためにも、解散前に全員が着席した状態で、監督者がすべての問題用紙を回収する手順を徹底することが望ましいと考えます。そうすることで、不正行為の防止だけでなく、受験者が安心して試験に臨める環境づくりにもつながるでしょう。
※掲載内容は2025年2月時のものです。