給与計算実務能力検定試験2級・1級に合格され、会社で給与計算担当者の育成に検定試験を活用されている中山秋光さんにお話を伺いました。
私は元々20代後半から10年程度、給与計算担当者として給与計算業務全般を任されておりました。始めた当初は全く予備知識ゼロから担当を任されました。
この分野は、書籍などは色々と出ているものの、自分が勉強した給与計算知識を測る尺度が無かったので、毎回、果たして自分の計算が正しく計算されているのかわからなかったのです。
担当してみて思った事なのですが、給与計算というのはどの業種・業界でも基本は同じなのに、給与計算の標準的な業務知識を図る尺度というものが無いなあ、と常々感じていました。経理には簿記というそうした尺度があるのに対し、給与計算は、仕事の重要性・一般性からすれば、同様に標準的な尺度があればいいのにと常々思っておりまして、そんな中で、この検定ができたことを知って、是非第1回の試験を受けてみようと思ったわけです。
私は今の会社には4年ほど前に入社しまして、現在はそこで管理部門の責任者をしています。管理部門では経理・総務・人事労務など全て統括しているのですが、特に給与については全ての業務をアウトソーシングに出しているため、私が入社した当時は、部下については、残念ながら給与計算の業務知識が全く無く愕然としました。
もちろんアウトソーシングを否定するものではありません。アウトソーシングを出す前に、きちんした給与計算の知識がないと、正しいチェックもできないですし、会社の年度計画を立てるような時に人件費の計算ができないといったことにもなってしまいます。
そんな状態を危惧しまして、昨年から部下に給与計算の勉強をさせ始めて、社内のスキルアップを図ったのです。
最初私が教え始めましたが、私自身が、彼らがどこまで理解できたのか、どこを間違っているのか、何がわからないのかといった学習度合や達成度がなかなかわからなかったのです。給与計算担当者の育成というのはなかなか難しいと感じました。
そんな時にこの検定ができた事を知り、これは部下の学習の物差しとして使えるのではないかと思いまして、「私もやるから、君たちも受けてみてくれ」ということで、私自身の勉強にもなりますので、活用させていただくことにしました。
自分でも受けてみて感じたのですが、1級まで合格すれば、給与計算を任せられるレベルだなと思いましたね。2級については、給与計算担当者の入り口という意味で給与計算の基本について判断できるかと思います。こうした検定という形で体系的に給与計算を学べることで、どこでつまずいているかわかりますね。部下については、きちんと学習できたおかげで、昨年11月の試験では、受験した2人共無事に2級試験に合格できました。
1つ言える事ですが、モチベーションという点でも、仕事のためということで給与計算の勉強をするのもいいのですが、やはりこうした検定などの形で“合格を目指す”という目標があると、学習意欲が高くなり自信をつけるということが大切であると感じました。
2級に合格した2人も、今は1級の受験を目指してモチベーションを更に上げて積極的に給与計算の勉強をしておりますので、そんな効果も出ていますね。
給与計算という仕事は、誰にでもできる事務作業と捉えられているというのは少なからずあるように思います。
ただ、やはり正しい給与計算をする、正しくチェックするということにおいては、給与計算は、労働基準法であったり厚生年金法であったり、雇用保険法や健康保険法も知らないとできないと思います。給与計算をする上では、正しい知識、労務コンプライアンスというのが非常に重要だと思っています。
例えば、企業に何年かに一回、労働基準監督署の監査が入ったりすることがあるのですが、そういう時に給与明細をチェックされるというケースもあります。その時、割増賃金が法定の基準以上になっているかとか、就業規則で定めている手当が入っているかとか、説明を求められた時に、きちんと給与明細を読み解く力がないと、答えられないのですね。きちんと答えられないが為に、検査が余計長引いたりといったことも少なくありません。 そうした意味で労務コンプライアンスという観点からも、社内でしっかりとした給与計算実務者の育成、スキルアップというのが不可欠になっていると考えていますが、この検定は、労基法なども同時に学べ、手計算でも給与計算ができるようになり、本当にツールとしてありがたい検定だと思います。
この検定は、給与計算の仕組みを理解できる点だけでなく労基法をはじめとした法的な根拠についても確認ができるという点を勘案すると労務コンプライアンス対策に適していますね。実務能力者育成を兼ねることができるので、本物の給与計算担当者の育成にうってつけだと思います。
今後は、例えば会社で給与計算の担当者を募集する時には、この資格を持っているということであれば、即戦力として期待ができますし、持っていない方もこの検定を受けていただいて勉強の度合いを測るツールとして活用させていただければと考えています。今後も継続して実施いただいて、経理に対する簿記のような、標準的な給与計算の尺度としての検定試験になっていただければと思います。
※ 掲載内容は2015年1月取材時のものです。